第48章 或る日の安土城下(息抜き劇場)
「耳に蓋は出来ぬ」
聞きたくない話も入ってくる。
「…口に戸も立てれませんしね」
瑠璃がそう返すと、その人は
少し驚いたように目を見開いたが、
すぐ真顔に戻して、盃に口を付けた。
瑠璃の隣に座った男性を怯えるように見ていた男達は暫くして、逃げるように離れて行った。
「行きましたね。良かった。
お店に迷惑をかけるところでした」
「お前…自分の身の危険でなく、店の事を考えていたのか?
呆れたヤツだ…」
瑠璃を変な物でも見るかのような目をした。
「謙信様、ありがとうございました」
柔和に笑いかける瑠璃に、ちょっと眉を寄せると
謙信はスイッッ と視線を外した。