第47章 (終章) 煙の消えた後
瑠璃は、拝賀の日と同じように、
恥じらいも やましさも、戸惑いも、
何ひとつなく、まるで 家康なんていないかのように、躊躇すらせず、
上半身の着物を スルリと肩から落とした。
決意とか覚悟とか、そんなものは
一瞬も俺には見えなかった。
ただ、何かの作業みたいな様子で
帯を緩めると、着物の襟首に
白い柳の枝のような指を掛けた。
感情のこもってないクセに、
やけに女らしい…。
意図せず醸し出す上品な柔らかさは
生まれ持って、これまで培ってきた麗容。
俺は、男としてそこに湧き上がる衝動が
汚く、恥ずかしく思えて、
じっと耐えて、行き過ぎるを待った。