第47章 (終章) 煙の消えた後
「久しぶりに頭がスッキリして、気分が良いです」
『良い』というわりに、哀愁を帯びた哀しい笑顔をしているように家康には見えた。
「…そう…良かったね。安心した」
「家康様………
…心配して下さってたんですね。嬉しい」
「……馬鹿な事言わない。
ちゃんと笑えてないくせに。
無理してそんなコト 言う必要ない」
平気を装う言葉に、無理な作り笑いで、
なんとか平静を保とうとしている瑠璃を、
家康が窘める。
「覚えてるんでしょ。自分に起きた最悪の災難」
家康の翡翠色の瞳が憂色に染まって、
瑠璃から逸らされる。
「……っ…」
瑠璃は黙って俯いて、布団を強く握りしめる。