第3章 【優しく積もる淡い恋】千石清純
「うわ…かっこ悪。昔からとか言うつもりなかったんだけどな…。今日、凄くラッキーな日だと思ってたけど、そうでもないのかな…」
「あの…」
千石くんの言葉の意味が分からず私は思わず声をかける。
気になる言葉が漏れたこともあり、私は彼にその真意を早く教えて欲しくなってしまったからだ。
彼の言葉を私が都合よく解釈してもいいのだろうかと、騒ぐ心が煩くてどうにかなってしまいそうだった。
「今からさ、俺もかっこ悪いというか…まぁ捉え方によっては気持ち悪いかもしれない事話してもいい?」
「うん」
千石くんの真剣な眼差しに私は頷く。
頷いた私を見て、ふわっと笑ってから彼は口を開いた。
「俺、キミのこと。ずっと好きだったんだよ。いや、正確には少し違うんだけどね。中学を卒業した後に付き合った子とかもいたりもしたけどね。でも、キミの笑った顔が忘れられなくて…初恋引きずってたんだよね」
そう言って苦笑する千石くんが私の目の前にいて、都合のいい夢でも見ている気持ちだった。
自分に都合がいい白昼夢でも見ているのだろうかと、手の甲を捻ってみたけれど、痛いので多分現実なんだと思う。
彼に私の想いも告げなければと口を開くが言葉が上手く出てこなくて、変な呼吸音だけが漏れ出るだけだった。
そんな私のパニックに気付かないままに千石くんはそのまま言葉を続けていた。
「だからあの日、【女性名字】の引越の手伝いとか、正直アンラッキーだと思ってたんだよね。でも、まさかキミと再会するとは思わなかった。あの日、雨にずぶ濡れで歩く女性を見て大丈夫かな?と思ったから声をかけたんだ。でも顔をあげた子がさ、まさか【夢主名字】さんだとは思わなかった。こんな言い方、失礼だけど俺はラッキーだったよ。そこからはもう俺的には必死。キミを元気づけたかったから」
「私、たくさん千石くんに励まされたの。私こそ…千石くんには感謝の気持ちしかないよ」
「そっか。なら良かった」
千石くんの言葉に対して震えた声音で喋る私に対して彼は特に何も言わないので、もしかしたらそれぐらいに彼も今緊張しているのかもしれない。
彼の言葉に私の心臓の鼓動が早くなっていく一方で上手く喋れている自信は全くない。
顔だけじゃなくて全身が暑くてどうにかなってしまいそうだ。