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テニ夢企画用

第1章 【見えない角度で手を握り締め】財前光


好かれているのだろうか?と不安にならへん事が無かったかと問われれば、あると答えるしかあらへん。
無駄には喋らず、クールですましていてカッコいい人。
それが私の恋人、財前光という人間やった。

告白したのは私から。
玉砕覚悟で勢い余って告白してみればあっさりと『…よろしく』とだけ返されて、何か勘違いしとるのやないかと疑ったぐらいや。

「…えっと買い物に付き合うとかやないよ?」
「そんなん分かっとるわ」

そうぶっきらぼうに答えられてアホ面を晒した私を見て彼は笑った。
あまり笑う事の少ない彼のその感情表現を見て、笑った顔もカッコいいななんて思ったのは結構前のこと。

2年連続で同じクラスになって今年は同じ委員会になれたという事ぐらいしか接点のない私たち。
私は部活は違うので放課後はあまり一緒にいない。
私の部活がない日なんかは、財前くんを見に私はテニス部をのぞきに行くけれど。

テニス部のレギュラーの面々はめっさモテる。
顔がええのもあるけれど、やはりテニスをしとる姿はカッコいいし、それにみなさん個性豊かで性格も悪くない。
女子生徒にみんなそれぞれに人気や。

せやからテニス部の練習が見える場所はいつも女子生徒がたくさんいる。
彼女たちの視線の先は様々だけれども、凄く人気があるのは部長の白石先輩。

やけど、財前くんだって人気がある。
彼を見て声援を送る女の子を見た事だって今まで数え切れへん程にある。
2年生でレギュラーやし、クールな性格に整った顔。モテないわけがなかった。

せやから特別に何か優れとるわけでもない私と何故付き合ってくれとるのか不安になる時もある。
せやけど財前くんははっきりとものをいう人やから、私に嫌いとか無理とか言わんで傍に置いてくれているという所は自惚れてもええのかなとも思うが、別に彼に明確に好意を示された記憶もない。

そないな事を考えながらボーッとしとったらオーブンから爆発音が聞こえて驚いた。
目の前のオーブンからは煙があがっとるので慌てて扉を開ければ真っ黒焦げになった残骸達がオーブン内に飛び散っとった。
ケホケホと煙を吸い込んだ影響でむせながら私があたりを見渡すと部活のメンバー達が驚いた表情で私の方に視線を向けとる。

「……分量間違えたかも」

私がそう言うとみんなに爆笑の渦が巻き起こったのは言うまでも無かった。

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