第2章 【人気者の君に妬く】丸井ブン太
丸井ブン太という人物は人気者だなといつも思う。
「ねぇ、【夢主名字】さん」
「どうかした?」
私が廊下を移動教室から教室へと帰る途中で違うクラスの子に呼び止められる。
その子が手をこっちへという仕草で私を呼ぶので私は彼女のいる方へと歩み寄る。
何となくだけどこの後の展開は予想がついた。
多分何時も通りにテニス部の誰かの差し入れを渡して欲しいと頼まれるのだ。
「あのね…これ差し入れって大丈夫かな?」
「食べ物類では…ないよね?」
私が念のために彼女に確認する。
流石に暑さによって腐るとかまではいかないだろうけど体調面だけは慎重にならざる終えないので基本的に立海テニス部の差し入れで食べ物類は禁止になっている。
だからどうしても差し入れの話になると同じ問いかけをしてしまうのだが、私の問いかけに彼女は何度も頷いた。
その仕草は小動物の様に可愛らしくて、あぁ可愛い子だなと思った。
「じゃあ預かるね」
「ありがとう!!」
私は彼女から受け取った物を手にしつつ、そう言えば誰宛か聞いてなかったなと思い出す。
そして私は彼女から誰宛なのかを聞くと聞き慣れた名前を言われて私は内心苦笑しながら「分かった」と返事をした。
彼女は私が預かったのを確認すると自身のクラスへと駆け出して行く。
私はそれを見送ってから自分のクラスへと帰ったのだった。
「あ、また差し入れ頼まれたの?」
教室に帰ると友人の【友人名前】ちゃんが私の席に笑いながら近付いてくる。
立海男子テニス部の面々は目立つことも多いので女子生徒のファンが多い。
私はマネージャーという立場上、結構な頻度で女子生徒からの差し入れを渡して欲しいと頼まれる。
【友人名前】ちゃんも私が誰かしらの差し入れを持っている事が多いから最初は感心していたが2年もそれが続けば笑えてくるのだろう。
私も事務的に受け付ける事が多くなってしまったなと苦笑する。
昔に先輩マネージャーに「何度も頼まれると何も思わなくなるわよ」なんて言われたのを思い出してしまった。
昔からモテる人物が多い部活なのだろう。
先輩マネージャー達の苦労がよく分かる2年間を過ごしていた。