第1章 僕達*ヒロアカ(NL)
絶頂の余韻で笑う膝、そして蕩けた顔を添えたエマに煽られ、緑谷が自身のボトムに手をかけた時。
今まで黙って二人を見ていたもう一人が、その重い口を忌まわしげに開いた。
「緑谷くん、挿れるのは俺が先だと言っただろう。」
大きなベッドにゆったりと腰掛けた彼を振り返り、緑谷は一瞬だけ唇の片端を吊る。
忠告のような台詞を放った彼はオレンジの間接照明に灯され、ぼんやりと浮かぶ輪郭から苛立ちの色味がはみ出していた。
「心配しなくても、まだ挿れるワケじゃないよ。」
「もう充分だろ。そろそろ代わってもらう。」
「飯田くんもせっかちだなぁ…」
「君ばかり良い思いをさせる訳にはいかないからな。」
緑谷を退けてエマの前へ進んだ飯田は、寂光を失った眼差しで彼女を見下ろした。
エマもおろおろと彼と目を合わせ、小さく肩を縦に揺らして口を結んだ。
「…エマ………」
ーーー元はと言えば、彼女が緑谷と浮気をしたのがいけないのだ。
それなのに気付けば緑谷のペースに巻き込まれ、自分は彼と一緒にこんなことをしている。
なぜこんなことになったのか?
そんなもの、こちらが聞きたい程だ。
緑谷もエマも許せないが、何より現状に呑まれて平気な顔をしている自分が情けなかった。
「…んっ!」
飯田は伸ばした手でエマの項をガッと掴むと、彼女の息をも奪うように唇を啄んだ。
永久の迷路から抜け出せなくなった感情をぶつけるように深く、角度を何度も変えて。