第8章 [う] うちにおいでよ。....R18
さーて、どうしたものか。
未だ玄関の方からは、激しく戸を叩き茉莉ちゃんの名前を叫ぶ声が聞こえていた。
「茉莉ちゃん、一応聞くけどお父さんとは、なんつーか、もう会いたくないんだよな?」
「うん。」
「、、、、分かった。」
俺は彼女を助けるヒーローなんかになれんのか?ドクドクと音を立て忙しない鼓動を抑えるようにギュッと胸に手を当てる。
果たして俺に大人を黙らせる力なんてあんのか?
自信なんてある訳がない。
それでも、俺の手をぎゅっと握って離さない茉莉ちゃんを助けたいし、守りたいって思う気持ちが俺を突き動かす。
「ここで待ってて。ささっと話つけてくるから。」
めいっぱいの強がり。
俺は一呼吸置き、玄関のドアを開けた。
「そこのお宅に何か用ですか?」
「は?お隣さんは引っ込んどいてくれるかい?」
「ボク、茉莉さんのお隣さん兼彼氏なんですが?」
(まだ付き合ってないけど、良いよな?)
「彼氏なんて関係ねーんだよ!ガキは引っ込んでろよ。俺は茉莉に用があるんだよ!!」
太い腕に胸倉を掴みかかられ、すごい剣幕で捲し立てられる。
「茉莉さんはもう俺のものなんで、そちらが引っ込んでいただけませんかねぇ?」
「偉そうにするな。俺は茉莉の父親だぞ!!」
その瞬間、
頭の中でプツンっと何かが切れた音がした。
「娘を傷つけるだけの父親が偉そうに言ってるんじゃねぇよ。」
決してデカイ声でもない。
只々許せなくて口からこぼれた言葉は思ったより低い音でその男の耳に届いたらしく、一瞬にして怯んだその手は俺の服から離れていった。
「っつー事で、警察呼ばれたくなかったらさっさとお引き取りを。」
「クソッ」
そう吐き捨てると、茉莉ちゃんの父親はキッと俺を睨み背中を向け去っていった。
(びびった、、、、)
一瞬にして緊張が解けて、その場にへたり込みそうなほど身体の力が抜けた気がした。