第8章 [う] うちにおいでよ。....R18
何を言えばいいんだろう。
こんな時に気の利いたセリフの一つも出て来やしない。本当は、もっとちゃんとした事でも言えりゃあ良かったが、俺はただ、まっすぐに彼女に手を伸ばした。
「茉莉ちゃん!!!」
「テツくん、、、、、、
、、、、、、、助けて。」
「当たり前でしょーが!」
スッと立ち上がった彼女の冷たく小さな手が、俺の手を握り返す。
さて、あのおっさんをどうやって撃退したものか、、、と頭を回転させようとした矢先。
「うわっ!!え、ちょ、茉莉さん!!?本気!!?」
「だって、テツくんと一緒にいたい、、、!!」
茉莉ちゃんはベランダの手すりにつかまり身体を弾ませたかと思うと、俺の部屋との間の柱につかまり手すりの上によじ登ったのだ。
「あ、、待って、思ってたより怖いかも、、、!」
「デスヨネ!!!!ほら、ちょっとずつ、こっち来られるか!?」
「ん、、うん!、、、」
本当に、なんて危なっかしい
お姉さんなんだろうか。
こんな状況だってのに、俺の顔の筋肉は完全に緩みきって笑みがこぼれて仕方ない。
「テツくん、、、!!!」
俺は名前を呼ぶ君めがけて
両手を差し伸べる。
「もうぜってー離さないからな!」
その言葉に他意はない。
ただそのまま、
俺はその瞬間誓ったんだ。
部屋から部屋へベランダ伝いに俺のもとにやってきたお姫様は、目元を真っ赤に腫らし、でも100%の笑顔で頷いた。
「うん!!!」