第8章 [う] うちにおいでよ。....R18
19時半。
部活をやって疲れた身体をぶら下げ自宅のアパートに辿り着いた俺は、ドアを激しく叩く音を耳にして、急いでボロい外階段を駆け上がった。
あの日、茉莉ちゃんに出会った日の事が頭をよぎったからかもしれない。きっとまた彼女が俺の部屋の玄関を叩いているに違いない。そう思った。
だけど、そこにいたのは自分の父親くらいの年齢の男。そいつは激しく茉莉ちゃんの部屋のドアを叩きながら彼女の名前を呼ぶ。
「茉莉!!!ココにいんのはわかってんだ!!俺から逃げられると思ってんのか?」
見るからにただならぬ雰囲気。
コレが茉莉ちゃんの父親?
ふと、彼女がまだなんにもない部屋で言っていた言葉を思い出す。
"私、家飛び出してきちゃったんだー。"
何が何だかわからねぇが、
コレが全ての元凶なんじゃねーのか?
そう思わざる終えない。
彼女が何も持たずに家を飛び出した理由。
彼女が自分の事をあまり語らない理由。
そして、俺の手を拒んだ理由。
俺は、今すぐ掴みかかってやりたい衝動を抑え、気にも留めないフリをして自分の部屋に入った。
彼女は部屋にいるだろうか。
足早に部屋を通過しベランダへのガラス戸を開ける。吹き抜ける秋風を感じるのも忘れ、俺は身を乗り出し隣のベランダを覗き込んだ。
「茉莉ちゃん!いるか!?」
「、、、テツくん?」
そこには小さく丸まって膝を抱える茉莉ちゃんがいた。
「なんか、玄関に騒がしいお客さんいたから心配で、、、大丈夫、、、、じゃなさそう、だな。」
「あの人、私の父親。血は繋がってないけど、、、、。私、あの人から逃げたくて大阪に来たの。でも、何で!?何でここがわかったんだろう!?」
「お、お父さんか、、、!うん。なんか、すっごい茉莉ちゃんに執着してるっぽいな。」
「テツくん、、、あのね、、あの、私ね、、、あの人に、セックスを強要されてたの、、、ヤらせないと、お母さんが不幸になるって。だから、ずっと、我慢して、、、でも無理で、、、、」
彼女の口から溢れ出す現実は、想像していたよりあまりにひどい内容で、俺に説明する間茉莉ちゃんは必死で涙を堪え顔を歪めた。