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黒猫Punch‼︎ 〜黒尾鉄朗HB企画mini〜

第8章 [う] うちにおいでよ。....R18



俺は彼女がテレビを見ながらカップ麺をすする姿をチラチラと横目で伺った。


「茉莉サン。」

「ん?」

「ヤカンは必要経費だとボク思いますよ。」

「うん。買わなきゃね。他にも買わなきゃいけないものばっかりなんだよね。」


カップ麺を食べ終えた茉莉さんは、昨日出したばかりのコタツの温かさを味わうように肩まで布団を被り、真昼の縁側で寝そべる猫みたいに目を細めた。


「私の部屋、見にくる?」


どう答えようか思考を巡らせている間に、彼女はむくむくとコタツから出てきて立ち上がる。


「エロ本あっても気づかないフリしときマース。」

「それはこっちのセリフですー。」


(あ、やっぱ気付いてた?)

昨日この部屋に彼女が乱入してきたときの状況がパッと頭に浮かんだ。




茉莉さんの部屋は当たり前だけど俺の部屋と全く同じ作りなのに、異様に広く感じるくらい物がなかった。

ヤカンがないなんてまだマシな方で、ソファーもテーブルも、テレビも。なんなら布団やベッド、冷蔵庫もなくて、あるのは1週間は旅行できそうなスーツケースが一つと、大きなボストンバッグ。

たったそれだけだった。


「想像以上だな、こりゃあ。」

「私、家飛び出してきちゃったんだー。」


(顔と声が合ってないって。)

子供の家出とは訳が違う。
きっと何か理由があるんだろう。

さっきと同じようににっこり笑う顔とは裏腹に、声のトーンがあまりに寂しそうで、余計に心配になる。

もっと突っ込んだ話をするべきか。とは言え昨日会ったばかりの人間が聞く話でもないよな、、、。


「週末、空いてますよ。買い物とか。」

「え?」

「荷物運びなら手伝うし。」

「、、、ありがとう。黒尾くんてホントに良い人。」


少し遠回しな誘いに彼女は快く頷く。



茉莉さんは、
鍵のかかった宝箱みたいだ。

俺はそう思った。

二人しかいない月明かりが射し込む部屋。

隣に立つ茉莉さんは、
未だ謎だらけで、危うくて
綺麗で、放って置けなくて

ギュッと抱きしめてやりたくなるほど、
苦しそうに笑う人。


「まぁとりあえず、となり戻ります?」

「、、、、うん。」

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