第7章 [ろ] ロザリオに愛を、薬指に口づけを。....R18
誤解も解け、エナメルバッグを取りに茉莉さんを伴って部室に向かえば、中から蛍光灯とは違う淡い光。
茉莉さんに外で待ってもらいそっと開ければ、そこには携帯ゲームに向かう幼馴染の姿が。
「研磨なにしてんの?」
「ここにいればクロ帰ってくると思って。」
まあ鞄置きっぱなしだし来ねえわけにはいかないもんな。
「結局うまく行ったんだ。」
「…まあ、な。」
着替えをしながら返答すれば、ちょうど1狩り終わったらしい研磨が顔を上げた。
「よかったねクロ。でも体育館裏は声が響くからお勧めできない。次からは別のところでシてね。」
リエーフ、そっち行こうとして止めるの大変だったんだから、と鞄にゲーム機をしまいながらそう話す研磨。
礼はアップルパイ何ホール必要だろうか。
幼馴染への謝礼をどうするか悩んでいれば、研磨が俺を呼ぶ。
「明日の部活午後からだって。遅れないでよ。」
「努力する。」
「誕生日おめでと。」
じゃあね、と部室を出た幼馴染を目で追うと、俺は急いで着替えをし、外へ出た。
「遅くなりました。」
「…鉄朗くん、明日誕生日なんだね。」
さっき部屋から出て行った子が言ってたよ、と茉莉さんが俺を見る。
研磨のヤロー、わざと言ったな。
返答に困り目線を外せば、いつのまにか塗り直したらしいルージュの唇が、ぽそりと呟く。
「今から買い物するんだけど…一緒にケーキも買うから、家でお祝い、しよ?」
その言葉だけで俺は骨抜き。
茉莉さんの肩にかけてある重そうなトートバッグを奪うと、俺は呟いた。
「リクエストなんですけど、できれば秋刀魚、食べたいデス。
あと、代わりのロザリオ…探したいです…」
トントンと首元を叩けば茉莉さんはふわり笑う。
「あれはいいの。あれがなくてもテツヤは私の心の中で生き続けるから。」
それでも…と言おうとした時、次の行動を見越して茉莉さんが俺の唇に人差し指を立てる。
「じゃあ代わりは指輪。一生使えるものにしてね。」
ぽかんとした顔をしていたのだろう。
茉莉さんはくすりと笑う。
「1日早いけど誕生日おめでとう、鉄朗くん。」
やっと自分に笑顔が向いたことが嬉しくて、俺は茉莉さんの左手を取り、薬指の付け根に唇を落とした。
end