第7章 [ろ] ロザリオに愛を、薬指に口づけを。....R18
10月19日金曜日。
部活を終え、いつも通り家に向かう。
玄関で迎えてくれた茉莉さんはなぜかよそよそしかった。
表情がぎこちないというか、動きが硬いというか…
その理由は食事を終え、風呂に入る前にわかった。
「鉄朗くん、話があるの。」
硬い表情の茉莉さん。
先程まで食事をするために座っていたラグに座りなおすと、茉莉さんに向き合う。
「何ですか?」
きょろり、きょろりと泳ぐ視線。
真一文字に結ばれた唇。
緊張しているのか、手にはいつものロザリオが握られている。
視線が俺の瞳に定まり、唇が開いた時
俺は世界がひっくり返った。
「今の関係を終わりにしたいの。」
ああ。
やっぱり俺はまがいもの。
本物には敵わない。
俺は次の言葉が来る前に立ち上がった。
「わかりました。じゃあ俺、帰りますね。」
「え、ちょっとまって」
「俺は"テツヤさん"じゃないし代わりにはなれません。」
何とか表情を笑みに変え呟くと、茉莉さんの表情がさっと変わる。
「っ!違う!ちがうの!」
聞きたくなかった。
畳んでおいた制服を無造作にエナメルバックに突っ込み、玄関へ向かう。
鉄朗くん、と何度も呼ばれたけれど
俺は振り向かなかった。