第7章 [ろ] ロザリオに愛を、薬指に口づけを。....R18
彼女…茉莉さんとの出会いは偶然だった。
2年の夏休み、部員何人かで部活の買い出しに出た日。
通りかかった道で服を勢いよく掴まれ、振り返った先に彼女はいた。
「テツヤ⁈」
「…ごめんなさい、多分人違いです。」
焦った顔が一気に落胆の色に変わり、そして雫。
研磨達に買い物を任せ、とりあえず俺はオネーサンを連れコーヒーチェーン店へ。
コーヒーを2つ持ち席へ戻れば、オネーサンは申し訳無さそうな顔。
「…高校生でしょ?お金払うわ。」
財布を取り出そうとしたオネーサンの手を制するようにそっと掴めば、びくりと体が跳ねる。
「綺麗なオネーサンとお茶できたお礼ってことで。
…で、テツヤさんって誰っすか?」
物わかりの良さそうな笑顔を浮かべ、俺はオネーサンに問う。
瞬間、表情が翳り再び涙が溜まっていく。
「…昔付き合っていた人。急にいなくなったから実感が湧かなくて。
君と声がすごく似てたからつい名前を呼んじゃったの。」
昔付き合ってた、なんて軽く言えるような間柄ではないことは出会って数十分の俺でもわかった。
表情がまだその人のことを忘れていない。
「年上のこんな話聞かせてごめんね?」
「俺、代わりになれませんかね。」
ただの好奇心。
この女の人が"テツヤさん"にもつ感情を知りたいと思った。
俺が問えば、オネーサンは困惑した顔で目を伏せる。
「そんな…代わりだなんて…」
「オネーサンの寂しそうな顔が見たくない、っていう俺の我儘、聞いてもらえないんですか?」
よくそんな言葉が出るなと自らを感心し、オネーサンの手を握った。
そのあとはオネーサンの部屋に行ってなし崩しにセックス。
顔が見えないようにバックでシたら、テツヤさんの名前を呼んで泣きながらイった。
オネーサン…もとい茉莉さんに部屋の鍵をもらうのもあっという間。
そして、事情を聞くのもあっという間だった。
簡単に言えば目の前で事故に逢い、ショックでそこから数ヶ月の記憶がなく気づけばテツヤさんの葬儀は終わっていたらしい。
だから、テツヤさんがいなくなった実感が湧かない。
特に事故があった第3金曜日は彼を探してしまうらしい。
「だったらその日、出来るだけ家に行きますよ。」
つい、口走ってしまう俺の口。
それから俺は毎月1回、必ず茉莉さんの家へと通うようになった。