第6章 [つ] つよがりの先に
「ねぇ…」
「なにー?」
「結婚すんの、クロ?」
「振られなかったらな」
「なんであの人だったの?」
「全部好きだから」
「あ、そう…」
「簡潔に言って細胞レベルで惚れてる。なんなら影すら俺のもの」
「意味分かんない」
「じゃあ俺が一目惚れした話からしてやろうか?選んだ理由含めて話し出したら一週間くらいかかるけどいいの?」
「無理」
「だろ?だから簡潔に言ったの。あいつさ、このぬいぐるみみたいにいっつもにこにこしてんの。俺あのニコニコパワー貰って光合成しないと生きてけないって事に気付いたんだよなぁ」
「…色々面倒だからツッコまなくていい?」
「いいよー、俺が語りたいだけだし…。ほら、よく言うじゃん、嫁は空気みたいなもんで必要不可欠な存在だって」
「それって良い意味での言葉だったんだ」
「え!?違うの!?」
「知らないけどクロがそう思うんならそれでいいんじゃない?」
「茉莉のこと知れば知るほどこいつの為に生きて生涯守っていこうって思ったの。…お、こんなとこにゴムはっけーん」
「だから珍しく掃除なんてしてたんだ…」
「そう、俺って甘えてばっかりだから★」
「そんなもん持ってドヤ顔で言わないで」
「愛の結晶みたいなもんだろ、ある意味」
「いちいち生々しいんだって言い方が」
「…ま、でも茉莉が俺んとこ帰ってきたらもう一回ちゃんと言わなきゃな」
「何を?」
「茉莉がいないと俺はだめなんだって」
「ちゃんと帰ってくればの話だけどね」
「帰ってくるに決まってんだろ?俺は信じてんの、誰よりも。……来年には式も挙げたいし」
「決まったんだ」
「いーや、これから決める」
「あ、…そう」
「そん時はお前ら全員呼ぶから予定空けとけよ」
「まだ決まってもないのに」
「決めてんだよ。俺の中の未来予想図は完成してる。ちなみに友人代表のスピーチは研磨君で」
「はぁ!?」
「俺をよく知ってんのってお前じゃん」
「そこは夜久君でしょ?」
「お前だろ?幼馴染みだし」
「嫌だからね」
「いいじゃん、お前も晴れ舞台ってことで」
「絶対に嫌」
「頼んだぞ」
「ほんと無理だから」
「………土下座されたってやらないからね」