第6章 [つ] つよがりの先に
「…何なの、用って」
明らかにブスっとした表情で睨みを利かせた幼馴染み。
「よっ!研磨久しぶり」
「人を呼んどいてその軽い感じ、腹立つんだけど」
「でもちゃんと来てくれたじゃん」
「彼女と喧嘩別れしたって聞いたから面白いと思って…」
「え、待って。俺そんなこと一言も言ってないんだけど……、あ、もしかして夜久?」
「朝起きたら“別れよう”って置き手紙残して彼女が消えたらしいから慰めてやれって迷惑なメールが届いてた」
「別れようとは言われてねぇから。ちょっとアレだ、女の子の気まぐれ一人旅ってやつで」
「……家出?」
「……そうじゃないと思いたい」
「……家出だよね」
「……そうみたい。…でもまだ一緒に住んでるわけじゃないし、一緒に住んでないのに家出ってのも変だからやっぱり気まぐれ一人旅でお願いします」
「大分参ってるね、クロ」
「精神的ダメージはトラウマレベル」
「ねぇ、ここじゃなんだし入ってゲームしていい?こんなクロ見るのも珍しいし」
なんて生意気に笑う横顔にも今は感謝すべき存在だったり。
「何時間でもゲームしてってください」
「じゃお邪魔します」
「はいはいどーぞ」
研磨が来てくれて気は楽になった。相変わらずゲームに没頭してるけどこの空間が埋まるだけでもありがたい。
「何この部屋。なんでこんなにゴミ袋が溜ってんの?」
「絶賛お掃除中。身辺整理も兼ねて。あ、お茶とかはセルフでな…、今俺忙しいから」
「なら帰るよ?」
「遠慮すんなって。俺とお前の仲じゃん」
「そういうのいいから…。って何このぬいぐるみ」
「彼女のもん。朝起きたら彼女がこれに変わってた」
「何それ、ちょっとウケるんだけど」
「多分俺が寂しがらないように置いていったんだろうな。優しいよな…」
「それなら黙っていかないんじゃない?」
「そういう愛のないツッコミはいりませんけど」
「もともとないよ、愛なんて」
「あるのは友情ってやつですか?」
「そういう言い方もダサい」
呆れたようにため息をつく幼馴染に懐かしさを感じてつい吹き出して笑ってしまう。
あーあ、心底嫌そうな顔しちゃって…。
でも久しぶりに見たわ、研磨のそういう顔。