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黒猫Punch‼︎ 〜黒尾鉄朗HB企画mini〜

第6章 [つ] つよがりの先に


≫夢主side


駅に着いた時にはすっかり陽は昇っていた。駅前の広場では紅葉した街路樹がひらひらと舞って穏やかな日差しが降り注ぐ。全く知らない街なのに賑やかな街の様子は心を軽くさせてくれる。

でも目的地はここじゃない。もっともっと先に海の見える場所、そこにゴールはある。見慣れない景色の中大きな一歩を踏み出して、バスターミナルに向かった。



私を乗せたバスは家族連れやカップル、年齢層様々な観光客を乗せて車内は賑やかだった。どの声も楽しそうに弾んでいる。大きな窓から見える景色は色を映して、早くもクリスマスカラーに塗り替えられていく街、鮮やかに紅葉した山々を飽きさせることなく魅せていく。小さな頃、遠足に向かうバスの中で感じたような高揚感だ。

こんな景色鉄朗と見たかったな、なんて後悔。そして気付いたのはちゃんと連絡してないということ。慌ててスマホを取り出し電源を入れると案の定鉄朗からの着信、メッセージが何件か入っていた。

あんな置き手紙だけ残してきたんだもん、そりゃそうだよね…。

私の安否を心配してくれる内容が多くて、次に夜久君と香奈から私の事を聞いたってメール、そして何故か大量の謝罪メール…。

ちゃんと着替えてから寝るだの部屋の片付けを頑張るだの一体何のことで謝っているのか分からないメールもあったけど、でもそんな鉄朗の気持ちも嬉しいと感じていた。今まで心配をかけないようにとどこか我慢してしまう自分もいたから…、鉄朗にはちゃんと説明しなきゃって思ったけど、でももう少し自分の気持ちも整理したくて“わがまま、ごめんね…”とだけメッセージを送った。



そしてバスに揺られること一時間半…。海が見える停留所を降りて坂道を上ると木々に囲まれた空間に鳥居が現れる。以前テレビで見た通りの神社だ。“女性の願い事を一つ叶えてくれる神社”として有名でたまたま見ていた旅番組でピックアップされていた神社だった。

鳥のさえずりに赤く黄色く紅葉した木が風に揺れる音、木漏れ日の中で御朱印やお守りを求める沢山の参拝客、ベンチに座って眺める自分一人だけの空間は時間の流れも不安に揺れた心も穏やかなものへと変えていくようだった。

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