第2章 [く] クロ猫と傘と恋....R18
茉莉さんと逢ったのは
数ヶ月前の同じ様な雨の日
親父と些細な事でケンカした
別に仲が悪いわけじゃない
親父になにかされたわけでもない
ただ俺が荒れる時期だっただけ。
そんな日は
家に居るのが嫌で仕方なくて
夜を渡り歩くのがクセになってた
あちこちに作ったネグラ
でも、その日は今日みたいに
誰も捕まらなくて
突然の雨に濡れてたんだ…
『傘、ないの?』
綺麗な声が雨音に紛れて
俺の耳に届いた
振り向くと
傘をさした女子大生
タイプっちゃタイプだし
寒いし腹減ったし
「…入れてくれるんですかァ?」
ニコリと営業スマイルを貼り付けて
グッと背を丸めて顔を覗き込む
大概この笑顔一つで
ケツの軽いオネエさんは
女の匂い振りまいて
擦り寄って来るンだ
『え?あ…うん。
駅まで、とかなら…』
おやおやおや?
声かけて来といてタジタジ?
まさかな。
よくあるヤツ。
清純ぶりっ子な化けの皮は
「…僕、家なき子なんです
このままじゃ風邪引いちゃうなー…
ねェ?温めてよ?」
こっちの色気に剥がれ落ちるって
相場は決まってる
『え!?
迷子?!警察…』
おいよいよい!
マジかよ!いくつですかァ?!
「いや…あの…アレだ…
チョット家に居辛いので…
拾ってくれたら嬉しいな?的な?」
予想外の反応に戸惑いながら
らしくもなくストレートに言った
さすがに失敗だろうと思って
次のターゲットを横目で探してた俺に
『…なにか辛い事あったの?
まだ学生さんだよね?
ウチで良かったら…』
まさかの返事
分かってます?
俺学生だけどデカイし男だし
…って寝床見つかったのに迷う意味。
どうせ帰るつもりねぇんだし
乗っからなきゃ損だ。
「…んじゃ、お言葉に甘えて
お世話になりますぅ」
少し調子を狂わされながらも
擦り寄った温もりは
俺に無垢な笑顔を向けて
部屋に招き入れてくれた
飯、風呂
甲斐甲斐しく世話する
茉莉さん
まぁ、そんな女はいくらでも居る
どうせ最後はベットでの蜜が
目当てなんだろ?
そう思ってたのに
『ベット使って良いよ
私はソファーで寝るから』
毛布だけ持って
”オヤスミ”とベットを勧める