第5章 [て] 天に梔子-くちなし-....R18
「ひ、やぁ」
筋目を割り挿入してきた指に圧迫されて、秋宵に包まれた図書室に閃光が走った。黒尾の流暢な唇が、茉莉の耳たぶを軽く挟む。
「……はいっちゃったなぁ…? みっつは、初めてじゃねぇ…?」
「ま、って…っ、鉄朗、むり」
「どっちの、『無理』? 辛いんならやめる」
「っ、ちが」
見上げた先の白い半月が霞んでゆく。世界が黒尾鉄朗という男にごっそりと支配された瞬間は、いつも、無味無臭でいようと生きてきた18年間を解き放つような高揚感が茉莉の内側から花開くのだ。
「すっげぇ、な…っ、今までとは比べもんにならねぇくらい、溢れてくんぞ」
闇雲に突き刺しているわけではないそれは、茉莉のナカで器用に形を変化させると特別な場所を押し上げた。茉莉の控え目な声が渦を巻き散らばる。
「…っ、つか、俺もやばい」
黒尾の口から漏れた熱い吐息が茉莉の耳を濡らし、同時に太ももに当たる感触に頭頂がビリ、と痺れた。
黒尾のソレだ。
制服から剥き出しになった黒尾自身の形。直視しなくてもわかる。いつにも増して昂っているのは黒尾も同じであるということ。
溢れ出た液の先端がぬりぬりと茉莉の股裏を滑っていくと、茉莉はより下腹部を疼かせ瞬く間に一度目の絶頂を迎えてしまった。
「っ、茉莉…。今日は、俺の上、きて」
「……鉄朗の制服、汚れちゃうよ」
「なぁに、後ろから突かれたい?」
「また…っ、そういうこと言う…っ」
瞳を細めて悪戯っぽくわらっていても、苦しげな声が甘い蜜を渇望している。
なんて愛らしいんだろう。なぜこれほどまでに、この人は自分をこんな気持ちにさせるんだろう。去年まではまるで縁のない存在の人だった、はずなのに。
振り返り、黒尾を見上げる。
肩越しに広がる数知れぬほどの書物。古びた紙の匂い。
図書室でも、教室でも。校舎のどこにいても茉莉は無機質でいることを望んだ。例えば華やかな香りを振り撒く生徒が梔子の花ならば、自分は乾いたその実であればいいと思った。
___黒尾に恋さえしなければ。
「ここがどこかなんてどうでもよくなるくらい、俺の世界をお前で埋めてよ」