第5章 [て] 天に梔子-くちなし-....R18
茉莉のこめかみに密着した黒尾の鼻が、すう…と音をたてて髪の香りを吸い上げた。いつもの茉莉の匂いだ、と囁く程度の音量で聴覚を占領し、セーラー服の中心を鎖すジッパーに長い指をかける。
「もう、朝はなに」
「なにって、旨そうな匂いじゃねーか」
「あんなこと言われて喜ぶ女子いないんだからね」
「……茉莉チャン"だから"いーの」
「あ、ん…っ」
「おー、いきなり大胆な声だしますねぇ、いーんちょー」
「きゅ、うに…っ、"そっち"まで触るから…っ」
茉莉を施錠していた手は雄々しくもあり、いつしかそれは繊細さと柔さを掛け合わせたようなものに変化していた。臀部(でんぶ)を撫で下ろし内腿を別け、下着の裾をスライドさせた一本の長い指先が秘所の筋目をそっと擽る。
同時にパチンと弾かれた留め金はブラのフロントホックで、窮屈なものから解放された膨らみがたゆん、と一度上下したかと思えば、掌が優しく片方のそれを包み指の腹で小さな先端を転がした。
「てつ、ろ…っ、そこ、やぁ」
秘所の肉が捲られる。
隠れていた尖りを発掘されて、黒尾はまるで綿毛にでも触れるような加減で擦るのだ。眠っている情欲を優しく誘い起こしてくる、とでも言えばいいのかもしれない。
粗雑な思考も滑稽な欲動も、開け放した性の蜜に溶かされる感覚はうんざりするほど気持ちがいい。日常的な場所で非日常な行為をしているという背徳感さえ甘美な餌だ。
「イイ、の間違い、だろ…? す…げぇトロトロじゃねぇか。どぉした…?」
「あ、鉄朗が…っ、違うから…っ」
「俺は、普段通りだけど?」
そうは言っても、『普段通り』とは少し違う気がした。確かに触れかたに大差はないが。
「じゃあ、どうして来るなり、手、あんなことしたの」
「…あ~、もしかして、それで興奮しちゃった? 俺にがんじがらめにされて」
「つ、別にそうは、言ってな」
今日はどこか挑発的なのだ。