第4章 [お] おとがいにそっと口付けて....R18
「…ゴム、持って、ァ、ねーよ」
茉莉の手のひらが与えてくる刺激に俺の息も荒くなり、頭の中は「突っ込みてぇ」の一言に埋め尽くされかける。
が、そんな風に言って彼女を止めた。
ズボンの尻ポケットに入れた財布、そこに件のブツは忍ばせてあるくせしてそんな嘘をつく。
それは、なけなしの理性のせい――じゃなくて…「それでも欲しい」なんて言わせたいから。
(…そっか)
1ヶ月。
正しくは、1ヶ月と1週間。
会えなかった。
中学ン時は毎日のように会って、高校になって離れはしたけど付き合い始めてからは割と頻繁に会って。
夏前から、俺の部活と茉莉の予備校、スケジュールが微妙に合わなくなって、とうとう先月は会えなくて、電話で他愛のない話をして満足するようになっていたけど――。
(俺、今日、むちゃくちゃ会いたかったんじゃん)
むちゃくちゃ会いたかった。
会って、触れたかった。
ちゃんと、感じたかった。
湿り気のある茉莉の吐息。
少し汗ばんできた茉莉の肌の温もり。
それらを感じたかった。近くにいるのだと、確認したかった。
そして、“そう”なのは、俺だけじゃない…それも実感したかった。
(俺…どうしようもないくらい、お前が好きなんじゃん?)
指を抜いて、彼女を抱きかかえると、俺は後ろにある長机に茉莉を仰向けに横たえさせた。
「鉄、朗…」
切なさそのものみたいな声で茉莉が俺を呼ぶ。
「ゴム、無くても――」
「持ってんの思い出したわ」
証明するように、着たままの白衣の裾を翻してケツのポケットに突っ込んである財布を取り出し、目の前でそこからゴムを取り出した。
「…無くても、いいよ…鉄朗の、好きにして、いいよ…」
男なら誰しも夢見る昏い欲望の免罪符を躊躇いながら言の葉に載せた彼女に、俺は苦笑してデコピンをする。
「痛っ」
「先生、そういうのは感心しませーん」
ベルトを外してファスナーを下げ、屹立した俺自身に薄い被膜を施しながら、俺はちょっとだけ真面目な表情を形作る。
「そういうのは…俺が責任取れるようになるまで、もう少しだけ、待ってな。…あと数日だけ」
額の中心を両手で押さえていた茉莉が、一瞬、きょとんとしてから、変に律儀な俺に対して微笑を向けた。
「誕プレ…いま、決めたよ」