第2章 [く] クロ猫と傘と恋....R18
「おれの傘、貸してあげなくもない。
どうせ雨の日なんて出掛けたくないし
オヤスミ、クロ。」
小さな期待に発破をかける研磨
「いや…行く…とは…
それに…向こうの気持ちだって…
俺…こんなだし…」
「どっちにしても
傘を返さなきゃ進まないでしょ
…まぁ、好きにしなよ。
おれが頑張れるのはココマデ
チョット早いけど誕プレ。
後はクロ次第」
喋るだけ喋ってポテンとベットに沈み
程なく寝息を立てる研磨
さっき浮かんだ万が一に
足はユックリ部屋から廊下へ
廊下から玄関へ俺を運ぶ
雨水を広げて佇む傘は
この傘の持ち主を思い出させて
「逢いたい…茉莉さん…」
俺を家の外に向かわせた
まだ雨はシトシト降ってて
さっきよりも冷たく感じる
地面を蹴り上げて
速度を早める足に絡み付く雨水
さっき温めた足先が冷えても
速度は上がり続けて
懐かしい部屋の灯りを瞳が捉えた
電話を掛けて呼び出そうとも考えた
でも、きっと伝えたい言葉は
どうでもいい話に変わってしまうから
震える手で押したインターホン
『…クロ…くん?』
「え?」
ドア越しに聞こえた声に
思わずドキリとして
裏返る声
期待なんてしちゃいけない
そう思えば思う程
「なんで分かった?」
『それは…』
俺とアンタの気持ちが
「『傘…』」
一緒なんじゃないかって思ってしまう
「…傘がなに?」
『クロくんこそ…』
平行線な会話
交わらない気持ちは
『…ゴメン…
呼び寄せるみたいな事…深い意味は…』
少しずつ
磁石が引き合う様に
「ねぇの?
深い意味があって欲しいのは
…俺だけ?」
ジリジリと近付いて
『…クロ…くん?』
「逢いたかった…
茉莉さん…開けてくんね?」
二人の間の壁を一枚
取り払う
『でも…』
「顔みたい…
茉莉さん…抱き締め…たい…」
俺の心の偏ったコダワリも
「茉莉…俺を抱き締めて」
パラパラと剥がれて
雨の雫と重なって足元に落ちていく
『ズルい…
そんな事…言われたら…』
ユックリ開くドア
「ズルいよ、俺は…
茉莉さんを離したくなくて
紳士なフリしてた
ズルくて弱い…でも…
茉莉さん…ゴメンな」
見えた白い手を引き寄せて
思いっ切り抱き締める