第2章 [く] クロ猫と傘と恋....R18
茉莉さんと別れた後
携帯を必死で繋げた相手は
女じゃなくて
「…なんの嫌がらせ?
鬼電で起こされるの
おれが嫌いって知ってるよね?」
研磨。
「風呂貸して…
後メシと寝床と…」
「強盗なの?」
「…ダメ?」
「…びしょ濡れのまま帰して
風邪引かせたら
おれが夜久くんに怒られる。
入りなよ
母さん達は飲みに行って居ないから
残り物しかないし
お風呂も溜まってないけど
適当にして行けば?」
「…ラッキー…」
傘をさしてても
濡れてしまった肩を窄めて
制服を脱ぎ捨てながら
風呂に駆け込んで
冷えた身体を熱いシャワーで温める
置いてあったジャージを着て
研磨の部屋に入ると
いびつなオニギリがゴロリと
机に置いてあった
「…文句言わずに食べなよ
なんにもないからとりあえず握った」
「いやいや…研磨が女なら惚れてるヤツ」
デカ過ぎるオニギリに
クスリと笑うと
「おれはクロが彼氏とか絶対ヤダ。
アチコチで寝て帰るオトコとかサイテー」
スンッとした顔で思いっ切り
心を抉ってくる研磨
「…別に…好きでこんな事してるわけじゃねぇよ。
ただ…なんかカレカノってのに
抵抗がある…いつかは離れるかもなのに
居なくなるかも知れんのに
入れ込みたくねぇ…っていうか…」
分散してないと
重い愛で押し潰しそうな
細い身体が頭を掠めて
グッと口を結ぶ
「…絶対なんてないじゃん。
そうならないかも知れないし…
って。別にクロの好きにしたらいいけど
サッサと食べて寝て。おれ限界」
俺の好きに…して
今の状態なわけで…
拒否されたわけで…
塩味のキツいオニギリを噛りながら
何度も漏れるため息に
「…あのさ。
一回しか言わないし
別に気にしなくても良いけどさ」
背を向けてた研磨がムクリと
起き上がって俺の目を見据える
「想像にビビって完結するの悪い癖だと思う
クロはクロで
クロの未来はクロが作るんじゃないの?
”繋ぐ”って、頑張る感じが好きじゃないけど
”諦める”よりは嫌いじゃない。
使えるアイテムは使わなきゃ…」
「は?使えるアイテムなんて…」
研磨の言いたい事は分かる
でも、使えるモノなんて今の俺にはゼロ…
「傘…おれなら会いたくない人間に
絶対貸さない。」
ゼロじゃない?
でも、茉莉さんは優しいから…
でもでも…万が一…