第1章 おやすみ
あと一駅。
彼女はさっきよりもふらついていてどうにも危なっかしい。あんなに遠慮して戸惑ったような感じだったのに、今はもう俺にもたれかかっていた。
大丈夫かな。
着いたら駅員さん呼んだ方がいいかな。
軽く背中を摩ると彼女は辛そうに息を吐いた。
「気持ち悪い?大丈夫?」
「貧血だと思うので……少し休めば、大丈夫……」
全然大丈夫じゃなさそうだけど。
見たところ十代後半か、二十代前半の女性だ。俺と同じくらいだろうか。
電車のスピードが落ちる。目的の駅のホームが見え、徐々に停止した。
扉が開くと一斉に降りようとする人に背中を押される。俺は彼女を庇いながら電車を降りる。
肩を支えてホームの人気の少ない方へと歩いた。
彼女は柱に背をもたれるとへたりと座り込んだ。俺はすぐ傍の売店で水を手に取り店員に手渡した。タッチパネルに触れ支払いを済ませる。
テープを貼ってもらった水のペットボトルを手渡され、急いで彼女の元に戻った。
「よかったら飲んで」
「ありがとうございます……何から何まで、すみません」
「いいって。はい、どうぞ」
キャップを開けて手渡すと彼女はこくこくと水を喉に流し込んだ。飲み口が唇から離れたところでキャップを渡すと、また眉を下げてお礼の言葉を零した。
「あの、もう大丈夫ですから……」
「そう?無理そうだったら駅員さん呼んだ方がいいよ」
「はい。あ、あの……お名前聞いてもいいですか」