• テキストサイズ

おやすみ、おはよう【makes】

第1章 おやすみ



駅は多くの人で賑わっている。
俺は急ぎ足で改札を通り、ホームへ向かった。職場まで三十分はかかる。ぎりぎり間に合うかどうかと言ったところだ。

もうラッシュは過ぎた頃だと言うのに人は多い。ホームはどこも人が列をなしていた。
適当な場所の最後尾に並ぶ。

今日は何かイベントでもあるのか?
ひどい混雑だな……。

スーツ姿の男性や革の鞄を持った女性。それから学生。その中に同じようなタオルを首に下げた人達を見つけた。

あぁ、コンサートがあるのか。

会場はあそこだろうか、と近場のドーム状の建物を思い浮かべる。駅員の声と共に電車が到着した。
ちらほらと降りる人がいて、それからその何倍もの人が電車に乗り込もうと歩を進める。勿論、俺もその中の一人だ。

これはきついな。
沢山の人が乗った後の既に満員の電車に体を押し込む。関節が軋むのを感じた。

さらに後ろから女性が俺を押しながら乗り込んできた。
いや、もう無理だって──。
抗議するように女性を見下ろすと辛そうな表情を浮かべていた。具合でも悪いのだろうか。

扉が閉まり、電車が動き出す。
無理な乗車はやめるようにと注意する車内アナウンスが流れた。

電車が揺れる。目の前の辛そうな女性は気まずそうに俯いている。
それもそうだろう。見知らぬ人と密着するのは気持ちのいいものじゃない。

俺は片手で手すりを、片手で扉に手をついて女性を潰さないように踏ん張った。


/ 20ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp