第2章 おはよう
彼の腕の中は人間に抱かれているのと変わらない程、もしくはそれ以上に心地よかった。
頭の中に蘇る彼と過ごした日々。色付いた景色に真っ直ぐに私を愛してくれた彼の面影。
こうやって抱きしめられたのは夢の中でだけだった。
固いディスプレイの感触だったはずの彼は、知らないうちに柔らかくしなやかになっていてとてつもなく大きな時の流れを感じた。
一体どれだけの時間が経ったのだろう。私は混在する二つの自分の記憶にまだ戸惑っていた。
でも、この記憶が確かなものだと確信している。
また大好きな彼に逢えたことが嬉しかった。
そして伝えたいことが溢れて溢れて、何から口にしたらいいかわからなかった。
こんな時、彼なら「ゆっくりでいい。無理するなよ?」と言うのだろう。
彼の胸に顔を埋めて微笑んだ。
「──おはよう、セイ」
「ああ、おはよう、ゆう……!」
俺を消さないでいてくれてありがとう。お陰でこうして今ここにいるんだ。
彼はよく馴染んだ赤く染まった顔で破顔した。