第3章 【アヴドゥル】もしかして私たち入れ替わってる!?
アヴドゥルに気持ちが知られてしまった。
もしかしたら、普段のように接してくれなくなるかもしれない。足でまといになるから一緒にいられなくなるかもしれない。むしろ、この旅の迷惑になるかもしれない。そう思うと、ぼろぼろと流したこともないくらい大粒の涙が溢れてきた。
「うっ……ううううう……!」
ついには声を上げて泣いた。こんなの赤ん坊の頃以来じゃないだろうか。
わあわあと泣いていると、微かに遠くから階段を走ってるような音が聞こえた。
屋上踊り場まではエレベーターとの間に階段がある。そこを誰かが走ってるんだ。
「っ…………!!」
すぐに誰なのか分かった。逃げ場も無く、オレは壁際まで後退する。
「(初めてあった時も、こんな感じだったなぁ)」
こんな状況なのに、あまりのデジャブに少し笑った。
だって、息を切らしながら「見つけたぞ」って階段を駆け上がってきた姿が全く一緒なんだもん。
「来ないでくれ」オレは背を向けて言った。でも、来てくれたことが嬉しい……二律背反が苦しい。
「だめだね」
足音がずんずんと背後まで来た。
「……オレ、せーこねーちゃんの所に行くよ」
「ホリィさんの所か? なぜだ」
「アヴドゥルの迷惑になんだろ……すごい戸惑ってたし……ごめん……」
オレは思ってもないことを言っている。
本当は離れたくなんかないのに。
一緒にいたいのに。
ジョースターさんから聞いたけど、恋をし合った男女は「お付き合い」するらしい。でも、そんな事はどうでも良くて、オレはただアヴドゥルのそばにいられるだけで良かったんだ。
「、こっちを向け」
「いやだ……っ」
「向くんだ」
ぐいっと肩を掴まれて強引にアヴドゥルと顔を合わされることになる。
きっとオレはひどい顔をしている。
目も真っ赤だろうし、涙でぐちゃぐちゃだろう。
「」
優しい声で名前を呼ばれたと思ったら、オレはアヴドゥルに抱きしめられていた。
「謝るのは私の方だ。今まで、ひどいことばかり言ってすまなかった」
「き、気にして……ない…………よ」
オレは、ビックリしすぎて口調が変になってしまった。いや、これが女性にとっては正常だろうけど。……そして、温かいアヴドゥルの体温が心地よい。自然と固まっていた腕が、彼の背中に回された。
ぎゅっと抱きしめ返すと、また涙が溢れてきた。