第1章 【アヴドゥル】気になってしょうがないんだ……!
目が泳ぐ。息が乱れる。心臓の鼓動がうるさくなる。体温が上がる。顔がどんどん赤くなる。……入口の開ける音からしばらくして、前方からガタンと席を動かす音と「前の席、よろしいかな?」と耳によく響く低音が聞こえた……。
小さな声で返事して頷く。
すぐに店員がやってくる。
「ご注文お決まりでしたらお聞きします」
「私は紅茶を。は」
アヴドゥルに尋ねられ、ようやく彼女は口を開いた。
「同じので……」
「かしこまりました」
店員は注文を復唱した後、ごゆっくりと言って立ち去って行った。
しばらく無言状態が2人に続く。その間にも注文の品が届いていた。
おずおずとアヴドゥルを見上げる。彼は紅茶を飲んでいて、その視線に気づき「ん?」と反応する……と、慌てた様子で顔を伏せてしまった。
「…………」
「…………」
その席から遥か後方、みょうちくりんな格好をした男性が4人組がいた。ハート型の眼鏡をかけてアロハシャツを来た初老の男性が拳でゴンっと机を叩く。
「むごおおお〜! じれったいのォ!!」
ジョセフだ。
恐ろしく長い帽子を被るサングラスの男性がため息をついた。
「ありゃどーーーー見てもちゃんはアヴドゥルにほの字だろ。アヴドゥルのどこがいいのかねェ」
ポルナレフだ。
じゃらじゃらしたアクセサリーを首からかけまくった、マスクにサングラスの男性は、ヤレヤレと肩をすくめる。
「あのの様子を見て全く気づかないなんて……これは望み薄いんじゃないでしょうか」
花京院だ。
ひょっとこのお面をつけた男性が「かもな」と呟く。
「……承太郎まで来るとは意外だったよ」
笑う花京院は、また視線をあの2人に戻す。
「アヴドゥルさんはの様子が単純に気になるだけで、に対しては恋とか愛とかじゃあないような……」
「いや、それは違うぞ花京院」
ジョセフが言葉を続ける。
「あのアヴドゥルがしつこく聞き回るくらいの様子を気にしておる。これは……」
頬杖をついてニヤリと笑った。
「アヴドゥル自信が自分の想いに”気付いてない”んじゃーーー!」