第2章 【アヴドゥル】恋占いをお願いできますか
私はアヴドゥルさんに恋をしています。
けれど、きっと彼は、私のそんな恋心には気付いていないでしょう。多分、他のジョースター一行もそうでしょう。
私は生まれつきスタンド使いだ。傷を癒したりするヒーラー的な立ち位置です。SPW財団の紹介で、数年前にジョースターさんと出会い、そしてアヴドゥルさんに出会った。承太郎や花京院よりも付き合いは長くなります。
その頃から想いを寄せているけど……まったく進展はありません。
ここは1つ、賭けに出ることにしました。
「アヴドゥルさん! 私に恋占いをお願いできますか!?」
テーブルをバンっと叩き、私は身を乗り出して彼にお願いしました。テーブルの向こうの驚いた様子の彼は、読んでいた英字新聞を置いて、コーヒーをくいっと飲む。
「か、構わないが」
「明日の恋の運勢。お願いします!」
私は祈るように手を組みました。あなたに恋占いをお願いする意味がわかりますか。伝われ、この気持ち。……ってそう簡単に伝わらないのは重々承知しています! ですが、アヴドゥルさんもプロの占い師。占いの結果によっては彼も勘づく所もあるでしょうし、私にとっても恋占いで得られるものは大いにあります。
テーブルにお香と、綺麗なクロスが敷かれ、彼は、大きく逞しい手でタロットカードを混ぜていく。
そして、彼の指に火が灯ったと思ったら、用意されたお香からふわりと煙が上がった。その煙は窓からもくもくと出ていく。
「これはなんでしょう」
「浄化だ」
アヴドゥルさんは手を布巾で拭きながら言いました。本格的だなあと思っていると、アヴドゥルさんはタロットカードを1枚1枚煙に潜らせていく。これも浄化なのでしょうか。興味深げに、じいっと見つめると、真剣にそれらを行うアヴドゥルさんの顔にも目線がいってしまいます。