第22章 diable aux cheveux d'argent
今となっては、もうそれが叶うかどうかわからない。
「ふうん…」
意味深に笑った渡海は、隣に座る天城に向かって手を伸ばした。
不思議に思って見ていると、その手は天城の頬を柔らかく包む。
「俺が引き取ってやってもいいけど?」
どこかで予想した問いではあった。
だが天城はそれに対する答えは決めていた。
「ジュノがいるのに?」
「…ジュノって誰」
あからさまに不機嫌になってしまった渡海を見て、天城は心から笑った。
「おまえには、あげないよ」
これ以上、弟の人生に負担になるようなものを背負わせるつもりはなかった。
父親が背負わせた十字架の上に、更に兄である自分の想いを背負わせるわけにはいかなかった。
窓辺の床は暖かく、眠くなった天城は渡海に寄りかかって目を閉じた。
「あんたは…自由に生きたらいいさ…」
その声を聞いた渡海は、遠い目をした。
「そんなの俺の勝手だろ」
その声が天城に届いたか、渡海にはわからなかった。
「俺の自由は、俺が決めるさ」
小さく呟くと、兄の肩を抱いた。
そして自分の胸に引き寄せると、その髪に唇を埋め目を閉じた。
微かに、潮の香りがした。