第20章 こちらアラシノ引越センターの…②
かと思ったら、どこをどうされたのか、するりとスーツのジャケットを脱がされて、後ろからキツく抱きしめられた。
スマホやらなにやらポケットに入れているから、どさりと音がしてジャケットは床に落ちた。
「いやいや、ちょっと?」
「今日、いいでしょ?昔のこと思い出したらたまんなくなっちゃった…」
そう言って、潤もジャケットをするりと脱いで床に落とした。
今度は俺のみたいにガチャガチャした音はしなかった。
いつもだったら、俺よりもポケットに入れてるのに。
あらかじめ出しておくとは、計画的な…!
潤の白い手が、俺のベルトに伸びてくる。
同時に熱いくらいの潤の体温をワイシャツ越しに感じる。
「まて。はりきっちゃだめだ。俺らあと何連勤だと…それにローションもう、ねえだろ!?」
「明日、ちゃんと届くよ?だから残りは使っちゃお?今日!」
「きょ、今日!?」
やばい。
今晩、葬られる。
「ま、まて…」
ぐいっと潤を押してみたけど、当然動くはずもなく。
格闘の末、俺は玄関先で身ぐるみ剥がされた。
「もお…わかった…もう」
「降参?」
そういいながらも、潤の手は後ろから俺のこと握り込んで優しく動いている。
「お手…柔らかにお願いします…」
「わかってるって……翔」
そう小さく俺の名を耳元で囁くと、ちゅっとキスをくれた。
「せきにん、取るから」
「ぶっ…」
次の日、見事に起き上がれなかった俺は、やむなく病欠となったのだった。
せきにんは重い。
【END】