第19章 こちらアラシノ引越センターの…①
「気持ち…悪くないの…?」
「えっ?何が?」
「ゲイだとか…男同士で夫婦だとか…」
「なんで?別にいいと思うけど?」
「でもっ…」
かざまぽんは珍しく大きな声を出した。
「もし俺が、稲葉さんを好きだなんて言ったら、気持ち悪いだろ!?」
「…それって、恋愛対象としてってこと?」
「……」
かざまぽんは、下を向いて黙りこくってしまった。
「さっきは、さ。ちょっと驚いたんだよ。徳川さんと武蔵さんがそういう関係だなんて、俺にはちっともわからなかったから…」
うつむいたまま、かざまぽんは俺に背中を向けてしまった。
「鈍すぎでしょ…」
「ごめんね…?人の色恋って昔から感じ取ることができなくてさあ…」
俺、相当鈍いからなあ…
離婚した後で付き合ってた彼女にも何回も泣かれたし。
元奥さんだって、浮気してるの見破れなかったしね。
「だから、別に気持ち悪いとか。そんなこと絶対思ってないからね?」
「でも…」
コーヒーメーカーを置いている棚に手を置きながら、かざまぽんは背中を小さく丸めてしまった。
「稲葉さんがゲイに対して偏見持ってないとしても…稲葉さん、ストレートだから…」
「うん…まあ、そうだけど…」
「だから、俺が好きって言ったら、困るでしょ……」