第19章 こちらアラシノ引越センターの…①
嵐のように、おーちゃんと武蔵さんが去っていった。
「よーし…」
鍵束の鍵をじっくり眺めた。
あれ…?
あれ?
あれれ??
「…どうしてこれロッカー番号ついてないの…?」
そう。
鍵束の鍵には、ロッカー番号がついてなかった。
だからどの鍵とロッカーが合うのやら、俺にはちんぷんかんぷんってことになる。
「うっそでしょおお!?武蔵さーーーーん!!!」
涙目になって叫んでも誰も助けにきてくれない。
「どしよ…どしよ…どしよおおおおお」
パニクっていたら、ロッカー室のドアが開いた。
「あー…間に合ったぁぁぁ…」
入ってきたのは…
「かざまぽん!!」
ガションとタイムカードを押している背中が神に見えた。
「えっ…ああ、稲葉さん。おはようございます。いい朝ですね。僕は遅刻しそうになったんじゃなくて…」
「まじで、そういうのいいから。助けて!」
「は?」
かざまぽんこと、風間くんに事のあらましを告げたら、ちょっと顔が怒ってた。
「猫チャン…」
あれ、彼ってこんな顔もできるんだっけ?
そういえば、かざまぽんの笑顔しか俺はみたことがなかった。
「新鮮…」
「なにいってるんですか。とりあえず猫チャンを救出しなきゃ」
「あ、そうなんだよ!もう鳴き声が弱ってるからさ…」
「早くしないといけませんね…冷えてるから」