第18章 こちら、アラシノ引越センター!
少し、泣きそうになった。
そっかあ…
大野さんもしんどい思いして、ここに流れ着いたんだなあ…
バイトに入った時期が同じくらいだから、同じような時期に辛い目にあったんだろうか。
そう思ったら、自分のことまで思い出して。
でも、俺なんかよりも…大野さんのほうが、よっぽど辛い目にあってる。
ゴシゴシと、またおしぼりで顔を拭いた。
「…こんな業界だからさ…つなぎでバイト来るやつは、やっぱなんらかの脛に傷を持ってる奴が多いよ」
西川さんが、料理をつまみ始めた。
大野さんが、黙ってタバコを取り出して火をつけた。
紙タバコの紫煙が隣から漂ってくる。
「脛に傷っすか…はは…まあ、脛どころか、傷だらけのローラです」
「ぶっ…おまえいくつなんだよ!」
西川さんがアサリの酒蒸しの汁をこぼした。
それをおしぼりで拭きながら、まだ笑ってる。
「お、大野くんって、面白いんだね」
「へ?」
自分のどこが面白いんだと言わんばかりの疑問顔。
「ぶぶっ…」
その顔を見てたら、笑ってしまった。
「な、なんだよお…」
俺まで笑い出したのを見て、大野さんは困り顔だ。
この人、ほんと面白いな…
「いや、俺がローラって言ってもそんなに面白くないと思うけど…不思議だな。大野くんが言うと、なんかおかしいんだよな…」