第18章 こちら、アラシノ引越センター!
「あ、班長にご用事ですか?私、見てきましょうか?」
「ああ、頼む。消臭力いる?」
「いらぬ!」
事務所の裏ドアから廊下に出て、作業員さんの休憩室を覗いてみる。
ぽつんとふたりだけ、休憩室に残ってるのが見えた。
この前入ったばかりの大野さん(28歳)だ。
手持ち無沙汰そうに、長机に寄りかかって指の逆剥けをとっている。
その反対側の隅っこには、やっぱりこの前入ったばかりの二宮さん(25歳)がパイプ椅子に座っている。
午前の作業が終わり、午後の作業に向けて休憩しているんだろうが、全くリラックスした様子もない。
ふたりとも、人見知りな性格らしく…
体育会系のこのノリについていけてない。
まあ体格も、ふたりともガタイがいいとは言えないから、大変なんだろうなと思ったりする。
ま、バイトだからね…
すぐに音を上げて辞めていく人なんてたくさんいる。
このふたりは、再就職先が見つかるまでの繋ぎだって言ってたっけ。
でも明らかにガテン系じゃないけど、寡黙で真面目という評判だ。
社員の作業員たちは、好感を持っているようだ。
入って一ヶ月ほどになる。
ふと、ふたりが目を合わせた。
ふいと視線を先に逸したのは、二宮さん。
大野さんも慌てて顔を逸らす。
なんだか微妙な空気が流れているのを感じた。
本気の人見知りなんだろうなあ。
大丈夫なのかな…?
お友達になれるといいのに。