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ヘブンズシュガーⅢ【気象系BL小説】

第17章 上総介の場合


「へーえ…武田の殿サンは仲間の村のモン使ってるのになあ…」
「……」

コイツ、どこまで俺を嬲る。
そんな情報はとっくに俺の耳に届いている。
武田が忍びを使って情報を集めているというのは、明白だった。
これから今川領を切り取るために、たくさんの忍びを放っているはずだ。

どこの忍びを使っているのかわからなかったが…伊賀の国人だったか。

「…伊賀の国なぞ、この俺が焼き払ってやるわ」
「は?」
「俺は、忍びなぞ大嫌いだ」
「怖いんだろ?」
「……なんだと?」
「俺らを毛嫌いするお大名は、俺らのことが怖いんだ」

なんでもないことのように無門は吐き捨てた。
立ち上がると、スタスタと小屋の戸の方に歩き出した。

「おい!」

口を真一文字に引き結び、絶対なにも答えてやるかって顔をして無門は振り返った。

「二度と俺の前に顔を見せるな」

黙ったまま頷くと、戸を開け出ていった。

「……なんと恐ろしいことよ」

将来の禍根になりそうなものは、尽く焼き尽くさねばならない。



今夜、伊賀もその候補に入った。




「焼き尽くしてやる…」





たとえこの身が天魔になっても。







【上総介の場合・終】
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