第15章 BOY【M side】EP.8
あれは…いつ書いた…?
「ジュン起きろよ」
目を開けると、乾いた泥まみれの手が見えた。
その手に頬を張られていた。
「んだよ…目開けたまんま寝てんのかよ?」
見上げると、これまた埃と泥まみれの作業着みたいな服を着た男が立っていた。
ここは…湾岸の工場跡地だ。
もうすぐ取り壊されて、新しい倉庫が建つと聞いた。
だからここは格好の『危険行為ができる撮影現場』になってて。
今日はここで、撮影が行われた。
俺をただレイプするだけの
…ゲイビデオの撮影だ。
「今日も迫真だったな…思わず本気で殴ってゴメンな…?」
何度か一緒になったことのある、蛇みたいな顔の相手役の男が、にやつきながら俺の手を取った。
「立てるか?」
男に腕を引かれ、立ち上がった。
だが、すぐに足の力が抜けて、汚い床に逆戻りした。
「あー…だめかあ…今日は5人だったもんな」
そう一人で呟くと、人を呼んだ。
二人がかりで抱えられて、控室代わりにしてる隅の方に連れて行かれた。
パイプ椅子に座らされると、勝手に俺の全身をスタッフが濡れタオルで拭いていく。
「…まあ、やりすぎちゃったけど、またよろしくな?ジュン…」
にやついたまま、男は軽く自分の服の汚れを払うと、出口のドアから出ていった。
「はい、お尻、こっち向けてください」