第11章 BOY【S side】EP.4
「…わかってるよ…大丈夫だから。そんなの心配しないで…?」
そっか…
着てる服も、上質なものだし…
松本さん、若いのにお金持ちなのかな。
こんなホテルに呼び出すくらいだし。
「…もう、そんな顔、させないから…」
「え…?」
きゅっと松本さんは口を結んだ。
何か考え込んでる。
「なんでもない」
「松本さん…?」
それから、俺にキスをくれて…
それから、とびきり素敵な笑顔をくれた
また胸の奥が、きゅっとした
「これ、なんだろ…」
ルームサービスを食べ終わったら、もう22時過ぎてて。
慌てて、料金をもらって帰ってきた。
"今度は指名するから、いい子にしててね…"
最後に抱きしめてもらった、あの腕の中。
思い出すと、また胸がきゅっとした。
ちょっとタバコの匂いがした。
それを思い出すと、またきゅっとした。
「…なんだろ…?」
なんで、松本さんを思い出すと
胸がきゅっとするんだろ
冬の街は、寒いのに。
俺の胸の中は温かい。
「なあに?櫻井ちゃん。さっきからブツブツ…」
送迎のお兄さんは、ルームミラーをくいっと直した。
「あ…うん、なんでもない…」
「今日のお客さん、どおだったのお?」
「…よかったよ…」
「え?なに?聞こえないわよお…」
「別に、いつもどおりッ」
「あ、そおー…?」
この日は、家に帰ってもずっと胸が温かかった…
約束通り…その一週間後に、松本さんは俺を指名してくれて。
ご飯に連れて行ってくれた。
その後、ホテルにも…
たくさん、たくさん
俺のこと愛してくれた…
松本さんに抱かれてる間、ずっと俺の胸はきゅっとしたままだった。
少し、苦しいくらい。
そして…
松本さんと出会って、二週間後───
俺の運命は、大きく変わることになる
END