第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
ものすごいスピードで、どっかに連れて行かれた。
気がついたら、王宮の中庭みたいなとこに来てる。
ぐるっと周りを石造りの建物に囲まれてる中に、箱庭みたいな中庭があった。
「ふん…ここまで来たら、民も追いつけまい…」
どさっと俺をベンチに下ろすと、不機嫌な顔で隣に座り込んだ。
「おまえ、偉そうだな」
「え…そ、んなことはないんだけども…」
「王に向かってそのような口をきく者なぞ、いないぞ」
「ご、ごめんなさい…」
だって…倫理観違いすぎるんだもん…
古王国時代はやっぱり、野性的すぎる。
俺にはどうしていいやら、ちっともわからない。
「あの…」
「……」
むっつりと黙り込んで、足を組んで、革製のサンダルのササクレを取っている。
「ジュンフィス…?」
「…なんだ」
「あの…ごめんなさい…」
「ああ…」
なんか…たくさんササクレあるなあ…
ちょっとうずっとした。
ササクレ取るの好きだし。
じーっと手元を見て黙ってたら、いつの間にかジュンフィスは俺の顔をじっと見ていた。
「…楽しいのか?」
「えっ…うん…」
「なにが楽しいのだ…」
「その…俺も取ってもいい?」
「はあ?」
呆れて手が止まっていたから、そっと手を伸ばしてササクレを毟った。
…楽しい…