第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
「おお~い!休憩ー!」
上の方から聞こえてきた声で、2時間経っていたことを知った。
「えっ…もう!?」
夢中になってて、全然気づかなかった。
そういえば、喉がカラカラだ。
死んじゃうから、飲み物飲まないと…
頭に被っていたタオルを解いて、首筋の汗を拭った。
切りに行くのが面倒で、肩まで伸ばしっぱなしにしてた髪の毛先にも汗が滴ってる。
髪ゴムで縛っていたのを解いて、汗を拭った。
穴に掛かってる縄梯子に足を掛けて、なんとか登り切る。
10メートルほどの縦穴は、壁が圧縮された砂だから崩れやすく危険だ。
だから登るときも降りるときも慎重にならないといけないんだ。
「あ、おつかれ!おーちゃん!」
こいつは、発掘チームの相葉。
大学では講師という立場だ。
「おーちゃん言うな…俺、一応准教授…」
ぎゃははと笑いながら、相葉は俺にペットボトルの水を差し出してきた。
「だあって!おーちゃん、若く見えるからさあ!」
「褒めてんのかそれ…」
ここは、エジプトのギザ。
ギザといえば、有名なのがピラミッド。
現在、俺、大野智の所属する、W大古代エジプト調査隊は、このピラミッド付近の発掘調査を行っている。
W大といえば、Y名誉教授が発掘した太陽の船が有名だが、最近は大きな発掘には至っていないのが残念だ。
まあ…もう掘り尽くした感はあるんだけどね…この辺…
あ、あくまで俺的に、だけどね。
Y名誉教授はまだまだお宝眠ってるって豪語してっけどさ。
今回はその付近に横穴を発見し、その調査なのだ。
「しっかし、あっつい…」
「あ、そういえばカイロからメール来てたよ」
「まじ?」
縦穴の近くに設置した基地(テント)で、メールチェックすることにした。