第2章 魔女の逃亡
空が白みがかかった頃、ユーリは目を覚ましていた
ぼんやりとした頭が徐々にはっきりし、自分の体を確認する
服は何も身に付けていないからすぐにわかった
男に戻っているのだ
ほっとしたような、ちょっぴり残念のような感情に複雑になる
隣に寝ているシヴァを見れば、規則正しく胸を上下させていた
「~~っ」
昨夜の情事を思いだし、急に恥ずかしくなる
今感じるシヴァへの思いはやはり憧れに近いものだった
それだけに、昨夜は本当の女のように喘いでしまったことが恥ずかしい
だが、後悔はしていなかった
とても幸せだったのだから…
もう二度と味わえないあの感覚は、とても新鮮だった
今後、シヴァがあのように他の女性を抱くのだと考えたら胸が痛む
だからと言って、ユーリに口出しする権利は無い
ユーリはただの孤児で、シヴァはユーリを拾って育ててくれた恩人だ
しかも、シヴァはあまり口にしたがらないが、シヴァは貴族の長男である
もともとユーリは平民の子だったため、生まれた時から格差が激しい
つまり、昨日シヴァに抱かれたのは奇跡に近いのだ
「ありがとうございました」
ユーリは急いで服を身につけると、すぐ隣の自分の部屋へと戻っていった