第8章 これからの二人
季節は夏がそろそろ終わる頃――
窓を開けても生ぬるい風が入ってくるだけだった
ユーリは髪をひとつにまとめ、時折汗を拭きながら政務室の掃除をする
掃除が終わればそろそろ昼食の時間だ
まだこの時期は暑いため、基本的に訓練は午前中に行われる事が多い
そしてシヴァは午後は書類整理だ
ユーリは今日の昼食は何かと考えながら机の上に書類を並べる
種類や期限が近いものを分け、少しでもシヴァが見やすいようにしていると
「ユーリ!」
バタンと音をたてて開けられたドア
思わずビクッと肩を震わせてしまったが、現れた人物を見てほっとする
「どうしました、シヴァ様。そんなに慌てて」
髪が少し乱れたシヴァ
あぁ、前にもこんな風に走ってきてくれた事があったなぁ…なんて今になって思い出す
そんなユーリの視線に気づきつつも、シヴァはユーリの側へ駆け寄るとその手を握った
そして――
「ユーリ。ついに認められた。お前の戸籍が、女に変わるんだ」
「えっ………?」
不意に告げられた内容に、ユーリは思わずぽかんとしてしまった
暑さで頭がやられてしまったのだろうか
しかし、シヴァはもう一度言葉を変えて呟く
「ユーリは法律上、女になったんだ」