第5章 結婚式の夜
風が少し暖かく感じられるようになった頃
ユーリは昼休みにレイラとランチを楽しんでいた
普段はシヴァと一緒に過ごしているが、最近はとても忙しくあまり時間が合わないのだ
というのも…
「ふぅ。なんだか穏やかすぎて、もうすぐ結婚するなんて実感が無いのよねぇ」
カップをソーサーに置き、レイラがため息を吐く
その表情はいつもと変わらず、結婚を前にマリッジブルーを迎えている様子も無い
そう、婚約していたレイラとディーンだが、この度正式に結婚の日取りが発表されたのだ
ディーンといえば王家に次ぐ高級貴族のため、その結婚式は盛大に行われる予定である
しかし、騒いでいるのは周りだけのようで、当人たちは淡々と準備を進めていた
レイラも既にドレス等の準備を終え、後は体調を整えて当日を迎えるだけだ
「シヴァ様と一緒にいられなくて淋しい、って顔ね」
レイラに頬を突かれ、ユーリは慌てて首を横に振った
シヴァは二人の結婚式の警備を担当するため、その指揮をとっている
ユーリも本来なら警備に就くはずだったが、意外にも任されたのはレイラのお相手だった
単純に暇になってしまったレイラの心を穏やかに保つ為の役割を担ったということだ
とはいえ、ユーリもレイラもいつも通りで、忙しいのはシヴァやディーンだけである