第1章 始まりは突然に
今までに聞いたことない、とても優しいクロの声。
いつの間にか止まっていた涙。
だけど、クロの腕の中の居心地がよくて、私はそのまま抱きしめられていた。
「クロは、別に誰でもいいから……さっきも……梟谷の子と……」
いくらここが居心地がよくても、現実は残酷だ。
先程、あのマネさんはクロの匂いに包まれていた。
もしかしたらあの子も、今の私のように────
「誰でもいいとか……そんな人とは「付き合えないんだろ? 知ってる……だから、きっぱりケジメつけてくっから、そしたらまた、ちゃんと俺の話聞いて?」」
なにそれ。
それじゃまるで、クロが本当に私を好きみたいじゃないか。