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「天つ風」「降る雪よ」

第1章 お彼岸の1日


「十四郎さん、あーん」
ニコニコしながら赤い、たぶん卵焼きであろう食い物を箸で摘まんで差し出された俺は、どうするべかか本気で迷った。
口に入れたら火を吹くのは確実で、しかし目の前の女は満面の笑みで俺が口を開くのを待っている。
数秒の葛藤の末、意を決した。
「ぐがっ…!」
舌を刀で斬られたような痛みに目を見開くと、そこにあった顔は、先程まで居た女に良く似た、しかしドS星から来た部下だった。
「総悟っ!てめえ何しやがる!?」
「おはよーごぜーやす土方さん」
悶絶する俺に対し、平常運転で挨拶をする総悟の手には『10倍辛い!』と書かれたタバスコの瓶。
「お前、それ」
「えぇ、ポカンと口開いて寝てたんで。タバスコ欲しいのかと思いやして。ずいぶんドMな起こされ方が好きなんですねぃ」
「んなわけねーだろ!」
叫びながら、水を求めて食堂へと走る。
途中廊下で、
「おはようございます副長、今日は冷えますね」
と、悠長に言ってきた山崎を蹴り飛ばした。
まったく、最悪な朝だ。
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