第3章 侍
警察が来て男が連れて行かれ、しかしスケジュールは待ってくれないのでプロ根性で撮影を終え、深夜に部屋に戻った私を待っていたのは、廊下の布団の上で正座している坂田さんだった。
「坂田さん、あの、今日はありが…」
「ちゃんごめん」
「え?あの、何がですか?」
「いやだって、枕、大事なヤツだったんでしょ、あの時ナイフ避けようとして、思わず枕盾にしちゃってさ」
「そんなの、別に良いですよ」
「本当に!?だってあれでしょ、結構お高いんでしょ、俺貧乏だから弁償出来ないしどうしようかと思って、結野アナのフィギュア売らなきゃかなとか、いやでもそれは辛いなとか思ってさ」
「助けてもらってそんな事言いませんよ」
「マジで?マジ天使!女神!俺の周りにはゴリラみてーな女しかいないから、あいつらなら絶対キレてるもん。あ、そもそもストーカー自分で殴り飛ばすか」
「はぁ」
「あ、ていうかちゃん部屋入りたいよね。悪りぃ悪りぃ」
頭をかいて私を部屋に入れながら、坂田さんは笑って言った。
「んじゃおやすみ。あ、枕無くて眠れなければ、銀さんの腕枕貸してや…」
「おやすみなさい」
そう言い閉じたドアの向こうで、
「レアだよ、銀さんの腕枕。最近全然使ってないから、もはや新品だから」
という声が聞こえていた。