第11章 闇 終
カカシは家に帰る途中、 父さんの、二の舞いにならないか、心がずっと騒ついた。
三代目に報告したことで、さらに事態が悪化しないかと、案じていたのだ。
ヤナギ……。
ぎゅっと、手に力がこもる。
「カカシ? 」
顔を傾ける花奏。にぎる手とカカシを交互に目をやる。不思議そうな顔だった。
「聞いてる?」と花奏。
なにか言っていたのだろう。
カカシの耳に届いていなかった。
「あ、わるい……なに?」
「肉まん買って帰ろ? おなか空いちゃった」
花奏は、店に指をさす。
「あそこの肉まん、美味しいよ」
「肉まん?」カカシも売店をみた。
肉汁のジューシーな香りが漂い、
店の周りには、
肉まんを立ち食いする客が4、5人いる。
「ね? すぐ買ってくるから」
袖口を引っ張る。もう行く気満々だ。
カカシは微妙な顔になる。
「いま腹なんか減らないし、食べたくないし……って、あのねーー……」
つないだ手を離して、店の方に走っていく花奏。ひとの話を聞かない。カカシは溜め息をつく。
「肉まん2つくださーい」
店員さんにお金を渡して、
くるりと振り返る。
「5秒ぐらい待って?」
目は腫れぼったいまま。
にっこり満面の笑みを浮かべる。
ゆるい天然パーマの茶髪が
カカシは、だんだんとイヌの耳に見えてきた。
「強引でしょ。 だいたい5秒なんかで、出来ないからね」
カカシは、はやく帰りたい。
でも、走って帰る気は起こらない。
家に帰れば、
本当の現実が待ってる。
父さん……。
部屋は、どんな状況だろうか。
掃除をして……
あと片付けをして……
カカシの気持ちは、暗く沈んだ。
オレは、
父さんのなにを知ってたんだろうか。
なにを見てきたんだ?
回避できなかったんだろうか?
父さんの、ちいさなサインを
見逃していたり
しなかっただろうか?
7歳のオレはひたすら
自問自答を繰り返した。