第11章 闇 終
「緊急なこと……? 」
聞いちゃダメなこと?
聞きたげな声がカカシに届く。
「うん、ごめん。……内容は言えない」
花奏の背中に触れる手が
ぎゅっと強まる。
言わないんじゃない。
言えない。辛すぎて言えない。
ごめん、意気地なしで。
幻滅するでしょ。
ずるくて情けない。ほんと。
「花奏、オレと三代目の話を聞けば わかるよ。 だから、いっしょに来てくれない?」
花奏の鼓動が早くなる。
肩に力が入り、少し間があいた。
カカシは
無理もないよな、と思った。
なんの話か、不安になるよね。
わかるよ、オレも恐い。
でも、でもな。
「花奏、今日だけお願い聞いてくれない? ひとりじゃ、オレ、乗り越えられそうにない。 ごめんな、巻き込んで」
ついてきてくれる前提で
カカシは喋った。
ごめんな。
オレはね
お前しか
思い浮かばなかった。
心を許せて、弱い部分を見せれるひとは、もう花奏しかいないんだよ。
1人じゃこの山は乗り越えれない。
乗り越えれないんだ。
カカシの視界は再び、
じわじわと濡れる。
「だいじょうぶだよ、カカシ」
花奏は、うん、うんと頷く。紅茶にミルクを入れたような茶色の髪がゆらゆらと動く。毛先はゆるい天然パーマで、くるくる巻いている。
「うん、だいじょうぶだよ。 そばにいるから、心配しないで」
花奏の透き通る声に、カカシは気持ちがほんのすこし、楽になった気がした。
「ありがと。 ……助かる」
熱いものが奥から込み上げていた。
花奏。
ごめんな、ありがとう。
嗚咽が漏れそうで、必死に奥に押しこんだ。