第11章 闇 終
花奏を抱きしめたまま、カカシは目をぎゅっと細める。痛々しい瞳は真っ赤に充血していた。
カカシは肺に、たくさんの空気を入れる。 初めて呼吸をするように、大きく息を吐き出す。 3回それを繰り返し、自分を必死に落ちつかせた。
それなのに鼓動は、逆に徐々に上がる。
「……花奏……」
言わなきゃダメでしょ。
黙ってたら、なにも伝わらないでしょ。
そうカカシは思うのに、続きが言えない。
落ちつけ。落ちつけ。
だいじょうぶだ。
カカシはこれ以上、
気持ちが高ぶらないように心に念じた。
「花奏……聞いてくれる?」
どくん、どくん……
心臓の音が密着した
胸から伝わりそうだった。
不安で不安で仕方ない。
でも逃げられない。逃げてはいけない。
カカシは、いつのまにか、
不安で押し潰されそうな気持ちになる。
花奏が、
オレを幻滅したら?
カカシは
また不安になる。
すると、聞こえる。柔らかな声。
「カカシ、うん、いいよ。聞いてるよ」
花奏の優しい声が、耳もとから聞こえた。
心が一気に落ちつく。不思議だった。
そして、気づく。
花奏の口数が少ない。
"どうして?なんで? "
花奏が聞かない。
まあ、オレの様子が
おかしいからでしょうね。
どんより沈んだ声と、
泣き腫らした顔だからね。
誰にも見せたことないし、見せたくない。
カカシは触れる花奏の身体を
あたたかく、心地よく感じた。
このまま抱きしめていたいと、
一瞬思ったが、そうもいかない。
カカシはゆっくりと喋り出す。
「オレね、いまから三代目に報告しに行ってくる。 本当は、こんなとこにいる場合じゃないんだよね」
「……え、報告?」
びくっと反応する花奏。
「うん。 絶対にオレが行かないとダメな話で。 残念ながらね……」
カカシの言葉に不思議がる花奏は
頭を少し傾ける。
ダークブラウンの柔らかい髪が、
ふわりと揺れた。
甘くて心地よいソープの香りが
カカシの鼻をくすぐった。