第11章 闇 終
「雪ノ里」
サクモは、言葉を失った。
そして、となりにいたフジの顔を横目で見れば、顔面蒼白だったのだ。
静かにその場を離れた。ほかの2人は、別の場所で捜査している。
サクモは、森の奥へ行き、ヤナギの父、フジへ問いかけた。
「おまえの、妻はたしか、雪ノ里出身だったな?」
フジは、小さく、小刻みに首を縦に動かす。
ヤナギの母は、フジの妻は、雪ノ里出身だった。
長期任務で知り合い、そのまま2人は結婚した。子どもが産まれた。名はヤナギ。 あたたかい笑顔に包まれ、幸せな結婚生活を送っていた。
「木ノ葉隠れ里で、雪ノ里出身の人は、ひとりしかいない……。つまり、おまえの嫁がスパイだと言うことだろう」
サクモは、こめかみを、ぽりぽりとかいた。数ヶ月間探した答えは、身近な人間。しかも木ノ葉隠れ里に堂々と住んでいる。
はあ、とサクモは、
脱力感に見舞われる。
木ノ葉隠れ里と、雪ノ里は良好な関係を築いていた。
金銭面で、余裕のない雪ノ里は、木ノ葉から援助を受けていた。
しかし、大戦により、資金面が苦しくなり、一時的に凍結を余儀なくされた。
突然、フジは、サクモに向かい、膝を地につけ、頭を地面に押し付ける。
「サクモ、頼む! 黙っていてくれ!オレから話をつける。必ず、オレから話をして里を出る。 だから頼む。少しだけ待ってくれないか!?なにか事情があるはずだ。頼む。この通りだ!」
地面に土下座して、懇願するフジを、サクモは困惑した。首を横に振る。
「無理だ。 何人死者が出たと思ってんだ。おまえの嫁がやった犯行だ。 三代目に報告義務がオレにある」
悲痛な目で、サクモを見上げた。
「サクモ……お願いだ。オレにとって、大事な妻だ。それに大切な子ども……、ヤナギがいるんだ。 アイツはどうなる。 母親を失った悲しみを背負わせるのか? 」
「…………」
「サクモ、お願いだ。見逃してくれ。この通りだ。頼む。頼む……」
サクモは間を置いた。
カカシと同い年のヤナギを思い浮かべた。
「サクモ!! 頼む……この通りだ……」
ヤナギの父が、ひたすら頭を下げる。
サクモは顔を一気にゆがめた。